僕たちは、自分を差し置いて他人を変えたいと願う。
しかし、荀子は言う。
人を貴ぶことはできても、自分を貴ぶように人を強制は出来ない。
人を信じることはできても、自分を信じるように人を強制することは出来ない。
人をうまく使うことは出来ても、自分をうまく使うように人を強制することは出来ない。
君子は、自分が善良でないこと、誠実でないこと、有能でないことを恥づかしくは思う。
しかし、人からどう思われようが、そのようなことは恥とは思わない、と。
そう、この世の中で、唯一、自分の力だけで改善できるものは自分自身である。
出典 (明治書院)新釈漢文大系5 『荀子 上』157頁
非十二子篇第六
君子能爲可貴、不能使人必貴己、能爲可信、不能使人必信己、能爲可用、不能使人必用己。故君子恥不脩、不恥見汙、恥不信、不恥不見信、恥不能、不恥不見用。
君子は能く貴ぶ可きを爲すも、人をして必ず己を貴ばしむること能はず、能く信ず可きを爲すも、人をして必ず己を信ぜしむること能はず、能く用ふ可べきを爲すも、人をして必ず己を用ひしむること能はず。 故に君子は脩(しう)ならざるを恥ぢ、汙(を)とせらるるを恥ぢず、信ならざるを恥ぢ、信ぜられざるを恥ぢず、能あらざるを恥ぢ、用ひられざるを恥ぢず。