転職も当たり前になってきたが、まだまだ良いイメージとはいえない。
履歴書を見て転職回数が多いと、それだけで採用を躊躇う人事担当者や経営者は多い。
日本には、優秀な人材であれば、どんな環境でも頑張れる筈だという、一種の思い込みがあるようである。
にもかかわらず、転職するということは、辛抱の出来ない、仕事における不適格者ではないかと、判断されてしまうのである。
もちろん、実際にそういった人物がいることも、確かである。
しかし、いくら優秀な人材であっても、それを活かす風土や上司がいなければ活躍はできない。
漢の武帝が、ある時、眉まで白い、年取った護衛を見かけたという話がある。
一体、お前はいつから護衛をやっているのかと問うと、文帝の時代からだという。
文帝は武帝からすると祖父である。
その護衛が言うには、彼は名を顔駟(がんし)と言い、文帝の時に始めて護衛となったが、文帝は文を好んだのにもかかわらず、彼は武を好んだため出世できなかったという。
文帝の次の景帝の時代には、彼はまだ若かったが、景帝は老人を尊んだので、やはり、取り立てては貰えなかった。
そして、今の武帝の時代、武帝は若さを尊重しているために、既に老いてしまった彼には、活躍の機会がなくなったのである。
さすがに哀れに思った武帝は、地方の司令官にしてやったという。
時代が、文帝、景帝、武帝ではなく、武帝、文帝、景帝と流れていれば、将軍の一人になれたかもしれない。
時代の流れに抵抗することはできないが、環境を変える(転職する)ことは、決して悪いことではないと、私は思っている。 自分が活躍できる場を探すことは、人間にしかできないことであるし、それは、働く一人の人間としての戦略なのである。