昔、「一に健康、二に人柄、三、四がなくて、五に能力」と教わった。
教わった当時は、いくら人柄が良くても、能力がなければ、役には立たないのではないかと思った。
しかし、こういった人は、決して世の害にはならないだろう。
この反対に、能力が高くて人柄が悪いといった人物こそ、諸悪の根源である。
紀元前5世紀頃の話である。
晋の国では、公室の力は弱まり、大臣達が権力争いを行なっていた。
この大臣達の中で、最も有力であったのが、知氏という家であった。
当主である知甲は、跡目を知瑤(ちよう、もしくは荀瑤:じゅんよう、知襄子ともいう)に継がせようとしていた。
この時、一族の一人が反対して言うには、
知瑤には、人に優っていることが五つあり、劣っていることが一つあります。
優れている点は、
1、体格・容貌が優れている
2、優れた戦士である
3、あらゆる技芸を行なうことができる
4、文章や話が巧みである
5、強靭な精神力を持っている
しかし、その人柄は甚だ不仁です。
人よりも優れている事柄がこれほどもあって、しかも、不仁であれば、人を見下し、人をないがしろにしてしまい、周りに敵ばかりを作ってしまいます。
知瑤を当主に立てれば、知氏は必ず亡びるでしょう。
しかし、結局、知甲は知瑤に跡目を譲った。
この後、知氏は他の大臣達を圧倒し、晋の国を手に入れる寸前までいった。
しかし、その傲慢さゆえに、結局、趙氏、韓氏、魏氏といった他の大臣達の裏切りにあい、知瑤は殺され、その頭蓋骨は、辱めを与えるために、飲器(杯とも、便器ともいわれる)にされたという。
(織田信長と浅井長政の逸話は、これから取ったのかもしれない)
以前にも書いたが、やはりリーダーには、能力と共により良き人柄、つまりは品性が大事なのである。 『知識がなく、仕事も大したことがなく、判断力や能力が不足していても、経営管理者として害をもたらさないことはありうる。しかし、品性に欠ける者は、いかに知識があり才気があり仕事ができようとも、組織を腐敗させる。企業にとって、最も価値ある資産たる人材を台なしにする。組織の文化を破壊する。業績を低下させる』(P・ドラッカー)