アメとムチという言葉は、嫌う人もいる。
しかし、人を動かす上で有効な手段である。
この、アメとムチをどうふるうか、その基本の考え方が『荀子』にある。
賞は過分であってはいけない。
また、刑は過重であってはいけない。
賞が過分だと、本来功績が無い者まで賞してしまう。
刑が過重だと、罪の無い者まで罰してしまう。
もし、不幸にも間違うとしたなら、賞が過分であってもいいから、刑が過重になってはいけない。
罪の無い者を罰するよりも、功績が無い者に賞を与える方が、まだましだからである。
部下を評価する時、今でも充分に通用する考え方である。
出典 (明治書院)新釈漢文大系5 『荀子 上』藤井専英著 399頁
巻第九 致士篇第十四
賞不欲僭、刑不欲濫。賞僭則利及小人、刑濫則害及君子。若不幸而過、寧僭無濫。與其害善、不若利淫。
賞は僭(せん)を欲せず、刑は濫(らん)を欲せず。
賞、僭すれば則ち利小人に及び、刑、濫すれば則ち害君子に及ぶ。
若し不幸にして過(あやま)たば、寧(むし)ろ僭するも濫すること無かれ。 其の善を害せんよりは、淫を利するに若かざるなり。